日本の年金制度は3階構造の例えで表されています。1階部分が【国民年金(基礎年金)】、2階部分が【国民年金基金(自営業者)と厚生年金(会社員・公務員)】。
そして、3階部分が【個人型確定拠出年金・企業型確定拠出年金/確定給付企業年金/厚生年金基金(会社員)・年金払い退職給付(公務員)】となっています。
しかし、老後資金2000万円問題が出てから日本の年金制度に対する信頼度は一気に低下したように思えます。
一昔前までは、年金だけで隠居生活と考えられていた時代もありましたが、これからはそうは行きません。
ここでの記事では、皆さんに今の日本の年金制度の現状を客観的に知ってもらうために、アメリカのコンサルティング会社が実施した世界の年金制度を検証した結果をランキング形式にしてお伝えしたいと思います。
多くの日本国民は、日本の年金制度を「持続可能ではない」「破綻する」といった不満や不安を持っています。それは、少子高齢化という問題を抱えているのにもかかわらず、政府は具体的な対策を示していないからです。現に今年6月に【年金デモ】が東京で行われたのがいい例です。
では、世界から見たわが国の年金制度はどのように評価されているのか。アメリカのコンサルティング会社マーサーが調査した【2019年度マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(MMGPI)】では、日本の年金制度は31位にランク付けられています。この指数は、世界の人口のほぼ3分の2を網羅する37か国の退職制度を比較し検証されて出されたものです。
この調査に関わった博士は「世界の年金制度は前例のない平均寿命の伸び、高齢者の健康と福祉を支える公共資源への確保。そして、退職者が長期的成果を確実に得られるよう、各国の政府は制度の長所と短所を見直す必要がある」と語っているように、年金問題は日本だけが抱えている問題ではなく、各国が抱えている問題(課題)です。こうした現状の中、世界でも最も少子高齢化が進んでいる日本のランクは世界から見ても危機的状況と言えます。
次は、37か国の退職制度を検証した指数をランキング形式に表しましたので、ご覧ください。
総合指数については、各国の制度を【十分性 (Adequacy)】、【持続可能性 (Sustainability)】、【健全性 (Integrity)】に大別された40以上の項目から3つの項目指数を加重平均して算出したものが下記の通りです。
ランク | 指数 | 国(総合点) | 評価説明 |
---|---|---|---|
A | 80以上 | ・オランダ (総:81.0、A:78.5、S:78.3、I:88.9) ・デンマーク (総:80.3、A:77.5、S:82.0、I:82.2) | ・優れたサービスを提供しており、高レベルな安全性と持続可能な退職所得システム。 |
B+ | 75~80 | ・オーストラリア(75.3) | ・多くの優れた機能を備えたシステムですが改善点はある。 |
B | 65~75 | ・フィンランド(73.6) ・スウェーデン(72.3) ・ノルウェー(71.2) ・シンガポール(70.8) ・ニュージーランド(70.1) ・カナダ(69.2) ・チリ(68.7) ・アイルランド(67.3) ・スイス(66.7) ・ドイツ(66.1) | |
C+ | 60~65 | ・イギリス(64.4) ・香港(61.9) ・アメリカ(60.6) ・マレーシア(60.6) ・フランス(60.2) | ・優れた機能がいくつかあるが、大きな欠点も抱えている。 ・欠点を改善しなければ、有効性や長期的の持続可能性 |
C | 50~60 | ・ペルー(58.5) ・コロンビア(58.4) ・ポーランド(57.4) ・サウジアラビア(57.1) ・ブラジル(55.9) ・スペイン(54.7) ・オーストリア(53.9) ・南アフリカ(52.6) ・イタリア(52.2) ・インドネシア(52.2) | |
D | 35~50 | ●日本 ・総:48.3、A:54.6、S:32.2、I:60.8) ・韓国(49.8) ・中国(48.7) ・メキシコ(45.3) ・フィリピン(43.7) ・トルコ(42.2) ・アルゼンチン(39.5) ・タイ | ・望ましい機能はいくつかあるが大きな弱点(欠点)がある。 ・弱点を改善しなければ、有効性や持続可能性は疑わしい。 |
E | 35以下 | なし | 開発初期段階か存在していない。貧弱なシステム。 |
全体平均 | 総:59.3、A:60.6、S:50.4、I:69.7 |
※データ引用:MERCERホームページよりhttps://info.mercer.com/rs/521-DEV-513/images/MMGPI%202019%20Full%20Report.pdf
上記のランキングを見ると、日本の年金制度のランクは下から2番目です。そして、このランキングでは【十分性 (Adequacy)】【持続可能性 (Sustainability)】、【健全性 (Integrity)】の3つの観点からなっており、その中でも日本の持続性(S)は、同じDランクで総合点が一番低いタイよりも低い評価を受けています。
特に低い評価を受けた持続可能性の指数の測定基準については、制度の長期的有効性の向上に貢献できるための変更が可能かというものです。つまり、年金支給年齢の暫定引き上げや国民の勤続延長の実現、貯蓄水準の引き上げの奨励が可能かといった、状況に合わせて努力や対策が出来るかということです。
日本の公的年金の支給開始年齢は、世界的に見てもほぼ平均的な水準ですが、日本の公的年金は積み立て方式ではなく、賦課方式を採用しています。今後も現役世代より高齢世代が多くなっていく日本で、現役世代から高齢世代に仕送りをしている年金制度では持続可能性の分野で低評価を受けるのは当然のことです。
また、未だに年金の受け取りや定年の引き上げ案が検討中という段階でもあり、日々進んでいる高齢化社会の現状に追いついていない状態も低評価に繋がった可能性があるといえます。
現段階での定年は65歳ですが、2019年5月、安倍首相は【未来投資会議】で高齢者の就業拡大に向けた方針を示しました。今後は企業側が70歳までの高齢者に対し、継続雇用や企業支援などの選択肢の提示を、努力義務の実施案として来年の通常国会に提出することになっています。現在の日本人の平均寿命は女性87.32歳、男性は81.25歳(2018年現在)なので、ほぼ定年という概念がなくなり、終身雇用の時代になっていくことを意味しています。
では、どうすれば良いのか。それは、常に学びの精神を忘れず、自身の市場価値を保ち続ける(上げる)ことが生き残る唯一のすべとなります。
年齢を重ねていくうちに「もう、年だから」「古い人間だから」と言い訳して自身のスキルアップを放棄していないでしょうか?確かに、昔はそれで済んだかもしれませんが、今後は死ぬまで働き続けなければなりません。そんな中、スキルがない人間は必要とされませんし、仕事にありつけたとしても安月給か重労働の仕事しかないです。
そうならないためにも、自身のキャリア寿命を延ばす取り組みをすることが、今後求められる生き方になります。