当サイトでは、さまざまな角度から日本の高齢化問題について取り上げさせてもらっていますが、お隣の国「韓国」でも高齢化問題が深刻化していることを、皆さんはご存知でしょうか?さらに言えば、将来日本に追いつくほどのスピードで、急速に高齢化が進んでいます。では、なぜ韓国は急速に高齢化問題が深刻化しているのでしょうか。ここでの記事では、そんな韓国の高齢化問題について深堀していきたいと思います。
目次
冒頭でもお伝えしましたが、日本と同様に、韓国でも高齢化問題は深刻化しています。「本当?どんな風に?」という声が聞こえてきそうなので、まず、どのくらいのスピードで高齢化が進んでいるのかお伝えしたいと思います。
高齢化問題の1つともいえる高齢化率について、日本と比較して見ていきたいと思います。
※情報元:韓国統計庁「人口動態統計」/ 内閣府「平成27年度版高齢社会白書」より
上記のデータを見る限りでは、現在の高齢化率は日本より低い値です。しかし、1990年に65歳以上の人口は「4.4%」だったのに対して、2015年には「13.0%」を記録しました。
2015年以降のデータは推計になりますが、2020年から急激に高齢化率が上昇し、2060年には日本と高齢化率が並ぶことが予想されています。そのため、スピードだけを見れば、韓国の高齢化は日本を上回っています。また、後ほど2020年から急激に上昇した理由について、ご説明致します。
補足ですが、世界の高齢化率(2015年時点)は、下記の通りになっています。
まず、2001年以降からの「少子高齢化」が原因で、韓国の高齢化が急速に進みました。韓国では、2001年以降出生率が年々減少し続ける一方で、平均寿命の上昇により高齢者の人口が増え続けています。
◇ 日本と韓国の平均寿命(男女含めた全体の平均)
2001年 | 2015年 | |
日本 | 81.42歳 | 83.79歳 |
韓国 | 76.34歳 | 82.02歳 |
日本では、団塊の世代の人たちが誕生した「第一次ベビーブーム(1947~1949年生まれ)」がありますが、実は韓国でも「1955~1963年」にベビーブームの到来がありました。しかし、日本と韓国では少し違う点があります。
その違う点は、ベビーブームの始まりが日本より遅く、ベビーブームの期間が長いという点です。
そこで、先ほど紹介した「韓国の65歳以上の人口率(高齢化率)」に繋がるのですが、2020年以降高齢化率が急激に伸びると予測されているのは、このベビーブーム世代で生まれた多くの人たちが高齢者になることが影響しているからです。
わが国の社会保障制度は、韓国より長い歴史があります。ちなみに、社会保障制度の1つでもある「国民年金制度」ですが、韓国で年金制度が導入されたのは、今から30年前の1988年からです。
◇ 諸外国を見てみると・・・
諸外国の中と比べると、わが国は1940年と遅めですが、それよりさらに韓国は48年も遅いことが分かります。
韓国の福祉制度は、欧州諸国やわが国と比べて「低福祉」といわれています。一般的に、社会保障の水準を判断するのに用いられるのが「社会保障支出率」なのですが、韓国の社会保障支出率は「2012年時点:9.2%」と一桁台です。対して、わが国の社会保障支出率は「22.4%」、フランスに至っては「32.1%」です。
しかし、韓国の高齢化率を見ると、わが国を含め諸外国と比べると低いため「比例して社会保障支出率も低いのでは?」と疑問を持たれる方もいるかと思います。では、諸外国が韓国と同じ高齢化率だった時代と比較してみたいと思います。
◇ 高齢化率が低くても「15%」を超える国が多数ある
1980年代では、カナダ、オランダ、フィンランド、スペイン、アイルランドなどの国の高齢化率は、現在の韓国と同じ「11~12%」でした。
しかし、社会保障支出率については、どの国も「15%」を超えており、その中でもオランダに至っては「24.8%」と高く、2012年の韓国の「9.2%」より遥かに上回る水準でした。
そのため、韓国は高齢化が進んでいないことを勘案しても、社会保障支出率は低水準だということが分かります。
高齢化問題に呼応するかのように、韓国は高齢者の貧困も問題となっています。韓国は、国民年金を受給する比率は80%以上なのですが、2010年時点で高齢者の貧困率が45%を超えており、OECD(経済協力開発機構)加盟国34か国の中で最も高いことが分かりました。
国名 | 66~75歳の貧困率 |
韓国 | 45.7% |
日本 | 17.0% |
アメリカ | 15.2% |
ドイツ | 8.1% |
フランス | 2.3% |
オランダ | 1.3% |
※情報元:OECD「Income Distribution Database(IDD)」2012年の国別・年齢層別の貧困率
韓国では、貧困から来る高齢者の自殺が諸外国より軒並み上昇しています。その背景には、子どもの教育を第一とした「教育方針」が絡んでいるといわれています。
◇ 大学受験戦争
ニュースなどで耳にしたことがあると思いますが、韓国の大学受験は、警察が出動するほどの一大行事です。それもそのはず、大学に受かるかそうでないかで、将来が左右するほどですので、親も子どもの教育費にお金をかけます。
しかし、多額な教育費を投じたばかりに老後の貯えができず、自身の生活がままならなくなる高齢者が多く存在するといわれています。そして、最悪の場合、子どもの負担になることを嫌がり、自ら命を絶つというのです。
近年、韓国では失業率の高まりなどから、子供も親を支えれない状況から、高齢者の自殺に拍車をかけているといいます。
※情報元:経済協力開発機構(OECD)2009年統計
この韓国の高齢者の自殺者数は、ハッキリ言って異常です。さらに、平均寿命が伸びれば、このような事態はますます増えることは容易に想像できます。そのため、高齢者の貧困問題の対策は急務といえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。現在の韓国の高齢化率だけを見れば、日本より遥かに低い値となっています。しかし、ベビーブーム世代が高齢者になる2020年以降から物凄いスピードで高齢化が進むと予測されています。その状況に合わせて、韓国の社会保障制度も充実していかなければなりませんが、それには国民の理解が必要不可欠です。「高齢化」「貧困」「貧困から来る自殺」と、韓国はもう待ったなしのところまで来ており、今後もさらに厳しい状況に迫られることでしょう。