当然だと思いますが、皆さんは社会保障制度という言葉は聞いたことがあると思います。では、社会保障制度の仕組みについてはでしょうか?ちなみにですが、恥ずかしながら私は数年前までは全く理解していませんでした。ある時この制度の財源は一体どこから出ているのか。という疑問に持ち始めたことがきっかけで学びました。
そして高齢化問題と社会保障制度は切っても切り離せないものであり、社会保障制度の仕組みを理解すると、とても他人事ではないことが分かります。話が長くなりましたが、ここでは社会保障制度の仕組みを可能な限り分かりやすくお伝えします。そして、高齢化問題にまつわる社会保障制度の現状についても理解してもらえたらと思います。
目次
生活を営む上で自分の努力や責任だけでは回避できない問題が多々存在すると思います。社会保障制度というのは、負傷、分娩、負傷、廃疾、老齢、 失業 、死亡、多子などからなる困窮の原因に対して、保険的方法や国の負担において、経済的な保証をする制度です。まず社会保障制度には大きく分けて下記の4つの分野に分かれています。
・社会福祉
・社会保険
・公的扶助
・保健医療と公衆衛生
社会保障制度というのは、基本的には上記の4つからなる内容により国民を支えています。次にそれぞれの役割について解説していきたいと思います。
社会福祉とは、「高齢者・障がい者・児童・母子」など社会生活を営む上で困難な状況の方へ、公的支援を行う制度のことを指します。またそういった理由から生活が大変な方でも、本来持っている能力を存分に発揮できるように、国をはじめとする地方公共団体や民間団体の社会福祉事業が支援を行うことも、社会福祉といいます。
そのためこの制度は、私たちが納めている税金を活用し、心身ともに健やかに、能力に応じて自立した生活を送ることが出来るよう支援を行うことを目的にしています。
人は生きていく上で、さまざまな困難に直面すると思います。主に社会保険の中で困難といわれているのが、失業や退職、労働災害に傷病などです。そしてこれらの困難に逢ってしまったことを保険事故といいます。
社会保険とは、そういった保険事故から身を守るために存在します。事前に国民から保険料を徴収し、保険事故に遭った人へ必要な額の給付やサービスを支給(提供)する仕組みとなっています。
・さまざまな社会保険について
上記で話した保険事故についてですが、法律や制度によって給付やサービスの支給内容が異なります。下記に各種保険別に分けましたので、ご覧ください。
・医療保険・・・病気やケガをしたときに適応される保険。
・年金保険・・・加齢や障害を負ったときに年金が支給される保険。
・労働保険(雇用保険・労災保険)・・・業務中の病気やケガ、失業をしたときに適応される保険。
・介護保険・・・介護が必要になったときに適応される保険。
公的扶助とは、生活が出来ない人に対し、最低限度の生活を保障するために経済援助を行うことをいいます。分かりやすく言えば「生活保護制度」と認識してもらえたら良いと思います。
もちろん、ただ生活が困窮しているからといって、直ぐに扶助が受けられる訳ではありません。しっかりと資力調査と所得調査を行った上です。また扶助にも8つ種類があります。
・生活扶助 ・住宅扶助
・教育扶助 ・生業扶助
・出産扶助 ・医療扶助
・介護扶助 ・葬祭扶助
国民が安全で健康的に生活が営めるのを目的に、医療、予防、衛生の安全性を確保するための制度です。下記に、主な取り組みについてまとめました。
・医師を始めとするその他の医療従事者や医療機関などが提供する医療サービスの充実の促進
・疾病を予防し、健康づくりなどを促進。(がん検診や感染症予防、予防注射など)(保険事業)
・母子共に、心身健やかに生活できるよう支援を行う。また児童の育成を促進。(母子保健)
・医療品や食品の安全性を確保を行う。(公衆衛生)
・下水道の整備
・公害対策 など
基本的にこれらの活動は、皆さんがお住いの自治体及び保健所や公営の病院(市立病院など)などが中心となって行っています。
社会保障費の財源については、基本的には「社会保険」以外は税金で成り立っています。一番わかりやすいのは、消費税ではないでしょうか。8%に増税したのも社会保障に充てる名目ですからね。
次に「社会保険」の財源ですが、そもそも社会保険というのは、日本国民であれば加入する義務があります。そして月々に保険料を支払っていると思います。その支払っている保険料が社会保険の財源となります。
ちなみにですが、皆さんが支払っている保険料のみだけが財源ではありません。租税といわれる税金から国や自治体からも出されています。つまり・・・
◎ 【月々の社会保険料】+【租税(税金)】= 社会保険の財源
平成30年度の社会保障費は「32兆9,732億円」となりました。一般会計予算が「97兆7,128億円」ですので、その内社会保障費が33.7%を占めていることが分かります。
ちなみにですが、前年度当初予算比では、4,997億円(1.5%増)増えています。また社会保障費は5年連続30兆円を超えており、過去最高を記録しています。社会保障費の内訳をまとめましたので、ご覧ください。
●年金給付費 ・・・11 兆 6,853 億円(前年度比+1.8%)
●医療給付費 ・・・11 兆 6,079 億円(同+0.9%)
●介護給付費・・・3兆 953 億円(同+2.7%)●少子化対策費・・・2兆 1,437 億円(同+1.4%)
●生活扶助等社会福祉費・・・4兆 524 億円(同+0.8%)
●保健衛生対策費 ・・・3,514 億円(同+15.5%)
●雇用労災対策費 ・・・373 億円(同+1.4%)
※引用:厚生労働省HPより
これらを見ても額が大きすぎてピンと来ないかもしれませんが、社会保障費は国家予算の1/3が捻出されており、これはいかに重要なことか分かりますよね。私たちの基準で言えば、「給料の1/3は家賃に捻出」。規模は全然違いますが、それだけ大事な分野ということだけ覚えてもらえれば結構です。
今年度の介護保険料の利用者の自己負担を含めた総費用が11兆円を上回ると厚生労働省は見込んでいます。介護保険制度が開始された2000年度の総費用については3.6兆円です。いかにこの18年間で一気に膨れ上がったか分かります。
また介護保険料については、「自治体の約8割が介護保険料の引き上げ~ますます上がる介護保険料~」の一部でも取り上げましたが、今後高齢化が進展しいくことで、ますます自己負担の増大が考えられます。
そのため、月々の介護保険料を増加させないためにも、自己管理(体調管理や不注意によるケガなど)を行い、なるべく保険事故をなくし、介護保険制度に頼らない生活をするのが大切です。
行政側ですと、自立支援の推進や状態の重度化の防止、介護サービスの効率化、無駄なサービスの撤廃など、介護にかかる費用を見直しや抑えることが重要となります。
現在わが国の医療費の総額は、平成 28 年度 については41.3 兆円と公表されています。医療費の内訳について下記にまとめましたのでご覧ください。
●医科診療費・・・30.7兆円
・入 院・・・16.5兆円
・入院外・・・14.2兆円
●薬局調剤費・・・7.5兆円
●歯科診療費・・・2.9兆円
●その他・・2億円
※情報元:厚生労働省HPより
また1人当たりの年間医療費についてですが、全世代では年間で32.5万円というデータが出されています。そのうち75歳以上の高齢者の1人当たりの年間医療費については「93.3万円」という驚きの医療費のデータが分かっています。補足ですが、75歳以下の医療費については低いため、全世代の平均が32.5万円となっています。それでも十分高いです。
こういった社会保障費が増大している中、国も財源の削減を行うべく対策を行っています。基本的には対策を行うイコール国民負担増なんですが、下記に箇条書きで一部まとめましたのでご覧ください。
・ジェネリックの使用の促進。不適切な投薬の削減。
・うがい薬や湿布薬などの症状が比較的軽い患者には、一部保険給付外とする保険給付の範囲の見直し。
など
・40歳~64歳の介護保険料を収入に応じた「総報酬割り」による算出方法を行い、大企業で働いている収入の高い会社員などから保険料の負担を強いる。
・75歳以上の高齢者が対象の後期高齢者医療制度の保険料負担軽減の特例を、段階的に縮小。
・高額介護サービス費の毎月の負担上限額を4万4400円に引き上げ。
など
前述した介護費や医療費は、年度ごとに増加しています。増加している原因は「高齢化」によるものです。
加齢に伴い体は衰えるため、病気やケガをすることで、介護や医療の利用を行う。そして高齢者の数も多いことから、介護費と医療費が比例して多くなる。というルーティンが出来上がっており、わが国の問題となっています。
現役世代の方もこの問題について、決して他人事とは思ってはいけません。何故なら、これからも介護費や医療費を含む社会保障費の捻出が増えれば、国は財源の確保や今あるサービスの削減をしようと対策に踏み切ります。
財源の確保や削減ということは、「税収を増やすために増税をする」「今まで出来ていたことが、条件を満たさなければ出来なくなる」「現在あるサービスの撤廃」などあらゆる負担増が私たちに押し寄せてきます。
また現役世代が、一番税金や保険料の徴収ができる世代です。そのため、増税を含めたあらゆる負担増なんてことになったら、一番打撃を受けるのは現役世代ではないしょうか。
まず病気やケガをしないことが一番です。病気やケガをすることで、介護や医療のお世話になります。それはすなわち介護保険や医療保険を利用することになるので、国の負担が増えるということになります。
そういった積み重ねや利用人数が多いことで社会保障費が増えるため、体調管理をしっかり行うことが、社会保障費の削減に繋がります。
また高齢者の方で多いのが、医療保険を利用して必要以上に薬をもらったり、湿布や塗り薬をもらうなどです。1割負担の方ですと、残り9割は社会保障費から出されています。そういったことを意識して不必要な医薬品などについては、頼まないという気持ちを持ってください。
介護費も同様です。1つ例に挙げますと、介護保険の利用で「介護ベッド」のレンタルが出来ます。物にもよりますが1割負担の方ですと、1,000~1,500円ほどで借りれるので、残りの9割は社会保障費から捻出されていることになります。
※補足:1000円が自己負担なら、残り9000円は国が負担となる。
しかし本当に必要な場合は利用すべきですが、他の物や保険外のサービスで代用が出来るのなら、極力介護保険の利用は控えるべきだと思います。
このように一見、制度を利用すれば自己負担が安く済んで「ラッキー」と思いがちですが、回り巡って必ず自身に負担(増税・保険料の増額など)が跳ね返ってきます。しかし国民全体が安易に保険に頼らなければ、こういった現状は改善されていくのではないでしょうか。そして社会保障費の財源は「税金と保険料」からなっていることを決して忘れないでください。