訪問介護の生活援助の利用回数制限が決定

2018年4月より行われた介護保険制度の改正で、訪問介護による生活援助中心型(以下、生活援助)に、利用回数の制限が要介護度別に設けられました。厚生労働省は、2017年3月19日からパブリックコメントを行い、関係機関から訪問介護の一定回数などについての意見をまとめ、2018年4月より正式に利用回数の制限が決定しました。施行については、2018年10月からです。

生活援助の回数制限が決まる

冒頭でお伝えしたように、2018年10月より訪問介護の生活援助に利用の回数制限が設けられました。そのため、今までのように利用が出来なくなる可能性がありますので、訪問介護を利用している人は必ず確認することをお勧めします。

回数制限早見表

生活援助の回数
要介護1 27回
要介護2 34回
要介護3 43回
要介護4 38回
要介護5 31回

これらの回数制限については、全国平均を基に定められたものです。生活援助の利用者層については、要介護3の認定を持っている人が最も多かったことが分かります。
※2016年10月~2017年9月分の介護給付の実績をもとに、各月の「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」の回数を算出して決定。

生活援助とは何か

生活援助とは、一体どういったサービスなのかを要点を押さえて解説したいと思います。

家事代行サービス

要介護認定が下りている高齢者本人が、自分自身で家事を行うのが困難と判断された場合に限り、訪問介護職員(ヘルパー)が高齢者の自宅に訪問し、高齢者本人に代わって【調理・洗濯・掃除・買い物・ごみ捨て】などといったサポートをすることを生活援助といいます。

生活援助の内容には制限がある

生活援助には規定があります。まず、家事の種類には制限があり、何でもやってもらえるわけではありません。本人が生活をする上で、必要最低限の家事しか行えません。

例えば【庭の手入れ・倉庫の整理・ペットの世話】などといった、それらの行為をしなくても本人の生活に支障がないものは対象外です。

同居人がいると利用できない

生活援助の利用条件は、原則1人暮らしの高齢者が対象です。そのため、同居人がいる場合は適用外となります。

しかし、各自治体の判断にはなりますが、同居人が介護認定を受けている場合や障害があるといった場合は認められることがあります。

生活援助の1回の利用料金は?

生活援助には2種類の時間(サービス)があります。

1つは【1回/20分以上45分未満:181円(単位)】と、もう1つが【1回/45分以上:223円(単位)】です。

時間(サービス)の決定については、利用者本人とケアマネジャー、訪問介護事業所などとの話し合いで決まります。
※事業所により国の基準を満たしている場所だと、通常より利用料金は高くなります。

なぜ、回数制限が設けられたのか

以前から「生活援助の回数が月100回以上利用している」「事業所の利益を優先して安易に生活援助を利用させる」「高齢者が家政婦替わりに利用する」などといった問題ケースが多々あったことが原因とされています。

もちろん、中には本当に利用しなければならない方もいると思いますが、これらの横行が原因で、生活援助の回数制限に踏み切ったと思われます。

多く利用したい人はどうすれば良いのか

前述した通り、本当に必要な方はいます。私が在宅ケアマネジャーをしていた時の話ですが、両足を骨折した1人暮らしの高齢者がいました。両足を骨折したため、家事がまともに出来なくなり、連日、生活援助の利用を余儀なくされました。

中にはこういった方もいるため、政府は、回数制限の例外を設けました。

専門職と必要性について協議する

回数制限を超えて生活援助を利用する場合、利用者を含めた関係機関同士で「何故、回数制限を超えても生活援助が必要なのか」を話し合い、ケアマネジャーは話し合った内容を基に、「○○が原因で回数制限をオーバーしても生活援助は必要」といった理由をケアプランに明記することが義務付けられました。

そして、理由が明記されているケアプランを市区町村に提出し、提出後に多職種が出席した地域ケア会議などを開催します。

そこで、さらに「回数制限を超えても本当に必要なのか」を検討し、妥当だと判断されれば利用ができます。

といったように、回数制限以上を利用する場合は、市区町村が介入することになったので、今までのようにケアプランを交付した後に「それじゃ、ヘルパーさんよろしくね」といったように、安易な利用が出来なくなりました。

しかし、明確な理由があれば、市区町村や総理大臣が介入しようが何も問題はありません。

民間でも生活援助がある

生活援助と堅苦しい名前ですが、言い換えれば【家事代行サービス】です。

民間でも家事代行サービスを行っているところはあります。そのため、地域ケア会議などで却下された場合、民間での家事代行サービスという手段が残っています。また、各自治体にある社会福祉協議会でも、安価で家事代行サービスは行っています。

補足ですが、【介護保険の生活援助】と【民間の家事代行サービス】を組み合わせて利用することもできます。詳しくはケアマネジャーに相談してみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
2018年4月の介護保険制度改正で、訪問介護による生活援助の利用に回数制限が設けられました。これらの決定には、安易に必要以上の生活援助が利用されていたことが原因といわれています。そのため、今回の改正は、社会保障費の適正化が狙いだと思います。

個人的には、今回の改正で膨れ上がる社会保障費の抑制になるのではないかと思っています。また、介護保険の生活援助は、国民から徴収した大事な【税金・保険料】で賄っているため、「自分さえ良ければ良い」という考え方を見直すいい機会だと思います。

しかし、この改正により今まで多く利用していた高齢者の生活環境は大きく変わってしまうので、ケアマネジャーを始めとする専門職は、今以上に高齢者のフォローが必要となるでしょう。

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