高齢者を狙った特殊詐欺は、年々巧妙になってきています。2020年11月までの特殊詐欺認知件数は1万2,291件と前年同期と比べて3,112件減少、増減率は20.2%減。被害総額は約245.7億円、前年同期と比較して約41.1億円減少、増減率は14.3%と警察庁より公表されています。詐欺認知件数、被害総額共に減少しているように見えますが「少なくなっている!」と手放しで喜べる推移とは決して言えません。
ここでは、注意喚起の意味も込めて、2020年に高齢者が被害に遭った詐欺事件をお伝えしたいと思います。
目次
2020年7月23日午後6時ごろ、兵庫県芦屋市に住む、無職で85歳の高齢女性宅に「あなたのキャッシュカードが不正に利用されています。警察と金融庁が合同捜査している。」と金融庁職員などと偽り電話がかかってきました。
電話後、女性宅を訪問し、別のカードが入った封筒と女性のキャッシュカード5枚をすり替えられ盗まれました。その際に、暗証番号も教えてしまったということです。その後、盗まれたキャッシュカードで、女性の口座から約46万円が不正に引き出されていました。
この事件で、兵庫県警芦屋署は同年10月15日、窃盗の疑いで大阪市城東区鴫野西に住む、22歳の幼稚園教諭、乾果音容疑者を逮捕しました。
調べに対し、乾容疑者「ホストクラブで遊ぶお金が欲しかった」と容疑を認めています。乾容疑者は、別の窃盗未遂事件で8月に岡山県警に逮捕され、同県警が携帯電話を解析したところ犯行が発覚したということです。
岩手県盛岡西署によりますと、2020年6月25日午前11時ごろ、80代女性の自宅に市の職員をかたる男から「保険の還付金がある。口座に振り込むので金融機関名などを教えてほしい」と連絡があり、女性はその男の指示に従い教えたということです。
その直後に、女性が教えた金融機関の職員をかたる男から電話があり「キャッシュカードの期限が切れており、新しくする必要がある。来店は大変だろうから今から自宅に向かう」と告げられ、スーツ姿の男が女性宅に訪問してきました。
女性は、スーツ姿の男にキャッシュカード1枚とそのカードの暗証番号を教えたということです。その後、女性の口座から現金約70万円が不正に引き出されたことで、事件が発覚しました。
盛岡西署の那須弘幸警務課長は「手口は似たものが多い。家族や地域で特殊詐欺を話題にして情報共有してほしい」と呼び掛けています。
2020年5月、神奈川県横浜市に住む80代の高齢女性がキャッシュカードをだまし取られ、口座から現金100万円が不正に引き出されました。
警視庁によりますと、80代の高齢女性からキャッシュカードおよび現金をだまし取ったのは、私立大学4年に通う児玉勇太容疑者21歳です。
児玉容疑者は、仲間と共謀して警察官を装い、横浜市に住む80代のの高齢女性宅に「詐欺に口座を使われ、キャッシュカードを止める必要がある」と嘘の電話をかけ、キャッシュカードなど3枚をだまし取りました。その後、市内の銀行で現金100万円を引き出した疑いです。
児玉容疑者は現金を引き出した翌日にも、東京都港区内の郵便局のATMで同じキャッシュカードを使用し、郵便局員に通報され、逮捕されたということです。
2020年6月12日、滋賀県大津市に住む83歳の高齢女性が10万円の給付申請をかたる嘘に騙され、計100万円をだまし取られる詐欺に遭いました。
警察によりますと、6月3日に銀行員を名乗る男女3人が女性宅に訪れ、「コロナの給付金の件で来ました」、「あなたの代わりに受け取り手続きをする」などの嘘で女性を信じ込ませました。女性は、3人にキャッシュカード1枚を渡し、暗証番号を教えてしまったということです。
その後、同月3日と翌日4日にATMから50万円ずつ不正に引き出され、5日に銀行から問い合わせがあったことで事件が発覚したということです。
2020年12月23日午後2時半ごろ、高知県香南市に住む80代女性の自宅に警察官を名乗る男から「口座に不正な出金がある」、「キャッシュカードの確認に行く」などの電話がありました。
電話があった30分後に自宅に訪れた警察官を名乗る別の男に「カードを預かる」などと言われ、男に3枚のキャッシュカードを手渡したということです。その際に、カードの暗証番号も聞き出されており、約266万円をだまし取られました。
女性は「2人とも丁寧な口調で警察官だと思った」と信じ込み、直後にトランプなどの入った別の封筒を渡されていたため、カードの盗難に気づかなかったということです。
その後、金融機関からの情報提供で被害が明らかになりました。
2020年9月24日、兵庫県高砂市に住む83歳の高齢女性から500万をだまし取ろうとしたとして、横浜市に住む18歳の女子高生が詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕されました。
警察によりますと、83歳の女性宅に同月23日夜に息子を装った男から「風邪を引いて声が変わった」、「電話番号もう変わった」などの電話がありました。翌日の24日朝にも電話があり、女性に「株で失敗して金が必要になった。立て替えてほしい」、「弁護士事務所の女性従業員が取りに行くので渡して」など頼み込んできたということです。
その後、女性は金融機関の窓口で500万円を引き出しましたが、金融機関の職員が不審に思い通報。高砂署は、女性にだまされたふり作戦での逮捕協力を依頼しました。
24日午後、女性から男に電話で「現金の準備ができたので取りに来てほしい」と誘い出し、約に2時間後にタクシーでスーツ姿をした女子高生が現れました。女子高生は、弁護士事務所の従業員と名乗ったということです。
女性は、居室に女子高生を招き、現金を受け取ろうとしたところ、別の部屋で待ち構えていた捜査員に詐欺未遂容疑で逮捕されました。
調べに対し、女子高生は「新幹線で来た。弁護士事務所の従業員になりすまそうとした。」と供述。県警は、女子高生を現金を受け取る役割の受け子役で、詐欺グループから指示を受けていたとみられています。
2020年5月11日午後3時過ぎ、愛知県南区に住む70代女性の自宅に警察官を名乗る男2人から「キャッシュカードが偽造されている。不正取引がある」などの嘘の電話がありました。
女性は電話の内容を信じ、自宅に訪れた警察官を名乗る別の男にキャッシュカード6枚を手渡しました。その後、ATMで複数回の引き出しがあり、およそ530万円だまし取られました。
愛知県では、同年5月11日から13日にかけて、キャッシュカードや通帳をだまし取る特殊詐欺被害が10件相次いでいました。こうした事態を受け、愛知県警は「キャッシュカードを渡してくださいは詐欺です。1人で判断せず、必ず誰かに相談してほしい」と注意を呼び掛けています。
2020年5月、東京都北区に住む60代女性宅に、息子を装った男から「大切な書類や小切手が入ったカバンを無くした」と嘘の電話がありました。女性は男の話を信じ、現金およそ1000万円を騙し取られました。
また、別の70代女性も同様の手口で、現金およそ1600万円を騙し取られており、警視庁は捜査をしています。
2020年12月10日、埼玉県の上尾署は、埼玉県上尾市に住む84歳の高齢女性が、手渡し詐欺で現金1,000万円をだまし取られたと公表しました。
上尾署によりますと、2020年11月25日ごろから数回にわたり、84歳女性の長男を名乗る男などから「高額の小切手、財布、携帯電話などが盗まれてしまった」、「いくらか用意できるかい」などの電話があったということです。
同日、話を信じた女性は自宅近くの路上で長男の部下を装う男に現金を渡し、その後も長男の部下を装う男に計4回にわたって、現金計1,000万円を渡したということです。
同居する長女が被害に気づき、届け出ました。
2020年4月23日、東京都荒川区に住む70代の高齢女性宅に、実の兄を名乗る男から「新型コロナ関係の仕事をしていて大事な書類をなくした。お金がない」、「信頼できる男を行かせるからお金を渡してほしい」と嘘の電話がありました。
話を信じた女性は、同月27日までに数回自宅近くの路上に現れた何者かに現金1,420万円を渡したということです。
警視庁によりますと、同年4月28日までに新型コロナウィルスを口実とした金銭などをだまし取る嘘の電話が24件確認されているということで、注意を呼びかけています。
2020年9月29日午前9時ごろ、愛知県岡崎市に住む80代の高齢女性宅に、息子を名乗る男から「現金とキャッシュカードなどが入った財布を置き忘れて盗まれた」などの嘘の電話がありました。
その後、息子の関係者の医療機器業者を名乗る男から「病院の機械の納入日でお金を振り込まなければならない。できるだけお金を用意してほしい」と電話がありました。女性は話を信じ、自宅に訪れた業者に現金2,100万円を渡したということです。
現金を渡した後、不審に思った女性は息子の家族に確認したところ、被害に遭ったことが分かりました。
2020年7月に、長野県茅野市に住む80代の1人暮らしの女性宅に、知らない男から「安曇野市に住む高齢者が茅野市の施設に入りたいと言ってる」という電話がありました。
男は「施設に入れるのは茅野市に住む人だけなので、名前だけ貸して下さい」と話したということです。
その後、この男や不動産会社の社員を名乗る男から電話があり「施設には入れたが、あなたはその際にリベートをもらっていないか」、「財産を正しく調べる必要があるので現金を下ろして送って欲しい」、「3週間くらいで調査が終わるので全額返す」などと言い、女性を信じ込ませました。
女性は、男の指示に従い2020年10月までに5回に分けて、お菓子と書いた宅配便で現金2,578万円を都内のアパートに送りました。その後、連絡が取れなくなったことで詐欺の被害に遭ったことに気づいたということです。
警察によりますと「女性は何度も電話を受け、言いくるめられてしまった」と話しているということです。
2020年8月5日夕方、東京都世田谷区に住む70代の男性に、長男を名乗る男から「インサイダー取引で失敗した」などの嘘の電話がありました。
男性は話を信じ、白いTシャツを着た男ら2人に現金2,900万円を渡したということです。
引用:テレ朝より
2020年12月22日、埼玉県の浦和東署はさいたま市緑区の72歳男性が架空請求詐欺で現金約4,800円と電子マネー約50万円分をだまし取られたと公表しました。
浦和東署によりますと、2020年7月2日、72歳の高齢男性の携帯に「記載の電話番号に電話をしてください」とメールが届いたため、男性は連絡しました。
電話をすると、通信販売会社社員を名乗る男や弁護士を装う男から「会費が未納です」、「裁判の判決が出て、賠償が求められています」などと言われ、男性は同日から10月29日までの間、さいたま市内にあるコンビニエンスストアで電子マネー約50万円を購入するとともに、金融機関のATMで約50回にわたり、現金およそ4,800万円を指定の口座に振り込んだということです。
男性は「男に返金の手続きができる」と言われたが、指定の日になっても連絡がなく、男に連絡するも電話がつながらなかったため、そのことを家族に相談し被害が発覚しました。
男性は「家族に話したら返金ができなくなる」などと電話で口止めをされていたということです。
2020年5月、大阪府に住む69歳の高齢女性が、特殊詐欺で2億2,000万円余りをだまし取られました。
警察によりますと、当時69歳の女性の携帯電話にNTTファイナンスをかたったショートメールが届きました。メールの内容は「利用料金の確認がとれない」などと書かれたメールだったということです。
女性はショートメールに書かれた番号に問い合わせ「身に覚えがない」と伝えると、その後、女性の携帯電話に神奈川県警などをかたる男らから相次いで電話がかかり「あなたのIPアドレスが犯罪に悪用され、被害者が訴訟を起こそうとしており、示談金が必要だ」、「
訴訟に発展する」、「犯人として浮上している」などと言われた上に、示談金を支払うように繰り返し要求されたということです。
女性は話を信じ、同年5月から9月にかけておよそ21回にわたり、都内の住所に宅配便で現金を送りました。また、口座振り込みなども含めて、合わせておよそ2億2,300万円をだまし取られました。
犯人側は、女性が金融機関から現金を引き出す際は「新型コロナウィルスの影響で知人の事業が低迷し、資金援助が必要だ」と窓口で説明するように指示していました。
その後、10月になり相手と連絡が取れなくなったことで不審に思い、女性が府警に相談したことで事件が発覚しました。
引用:NHKより
特殊詐欺の被害に遭わないようにするには、まず特殊詐欺の手口を知ることが重要になります。ここでは、上記で紹介した詐欺被害の手口をお伝えします。
特殊詐欺/振り込め詐欺 | 主な手口 |
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オレオレ詐欺 | 身内を装って電話で「現金が急に必要になった」などと信じ込ませ、動揺した被害者に指定した口座に振り込ませる。もしくはキャッシュカードなどを渡させる。 |
架空請求詐欺 | 架空の事実で金品を請求させる文章を送り、被害者にお金を振り込ませる。もしくは直接渡させる。 |
キャッシュカード詐欺盗 | 私服警察官や金融庁職員などを装い「キャッシュカードが不正に利用されている」などと不安を煽り「保護する」などとして、予め用意した偽のカードと本物のカードをすり替える。 |
預貯金詐欺 | 市町村の職員や税務署などの公的機関を名乗り「キャッシュカードを取り替える必要がある」などの口実で自宅を訪れ、キャッシュカードをだまし取る詐欺。また「手続きのために暗証番号が必要」などと情報を要求してくる。 |
名義貸し詐欺 | 老人ホームなどの利用利権、証券購入などの内容で「名義を貸してほしい」と電話がかかってくる。承諾すると、後日弁護士等から「違法で処罰される」など動揺させ、示談金の名目で現金をだまし取る詐欺。 |
これらの詐欺は、詐欺の中でもよく使われる手口です。そして、ここで紹介した事件の詐欺の手口になっています。
その中でも、最近ではキャッシュカード詐欺盗の被害が増加しています。公的機関がどんな名目であれ、市民の暗証番号を聞き出したり、キャッシュカードや現金を預かることは絶対にしません。少しでも疑問や不安に感じたら、家族や警察に相談してください。
こちらに、詐欺の種類と手口とその対策についてのまとめ記事が書かれていますので、ぜひ読んでみてください。特殊詐欺の現状と手口、高齢者向けの対策
いかがでしたでしょうか。
ここでお伝えした詐欺事件は、氷山の一角です。冒頭でもお話しましたが、特殊詐欺の認知件数は前年よりは減少傾向にありますが、依然として高い推移になっています。また、詐欺の手口は年々巧妙になっており、新たな手口も次々と生み出されています。そのため「私は大丈夫」といった慢心は非常に危険です。特殊詐欺の被害に遭わないためにも、常に最新の情報を得ておくことが重要になります。