わが国の人口に占める高齢者の割合はおよそ4人に1人と言われており、日本は世界屈指の超高齢化社会の真っ只中にいます。ただ、高齢者と同じような意味合いでも大きく分けて5つあり、老人やシニア、年寄りといった言葉が存在します。ここではそれらの言葉の意味や違いについて、ここでは解説していきたいと思います。
国連(UN)や世界保健機関(WHO)および日本での高齢者の定義は、65歳以上の人を高齢者としています。
日本では、そこから高齢者を【前期高齢者(65~74歳までの高齢者)】と【後期高齢者(75歳以上)】の2種類に分けられています。
ただ、法律によって高齢者の定義が異なることもしばしばあり、例えば、道路交通法では70歳以上が高齢者という扱いになっており、国民年金法では65歳以上が支給対象、高齢者の居住の安定確保に関する法律では60歳以上を高齢者としています。こうしたように、高齢者の立ち位置は曖昧なのが現状です。
辞書で高齢者と引くと、年齢が高い人・年老いた人と出てきます。ちなみに、高齢者の齢は【よわい・れい】と読み、意味は【年配、としごろ】です。
高齢者がよく使われる場面としては、公文書やニュース、新聞、案内掲示板などといった幅広い分野で使われることは多いですが、直接人に対して使うことはあまりないでしょう。
老人も高齢者と同様に法律で多く使われている言葉でもあります。最も代表的なのが【老人福祉法】ではないでしょうか。
この法律の目的および第一条には『老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、老人の福祉を図ることを目的とする』と明記されています。この法律は昭和38年(1963年)に施行され、政策対象年齢は65歳以上が原則となっています。
他にも日本の祝日、敬老の日について内閣府では「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」と説明しており、ここでも【老人】を使っています。
老人がよく使われる場面としては、公文書や用語(老人医療・老人介護、特別養護老人ホーム)で使われことが多い傾向にあります。
ちなみに、老人の【老】という字の由来は『人が腰を曲げて杖をつく姿』から象ったと言われています。
シニアの語源は、英語のseniorから来ており【年長者・上級者・高ランクの地位を持つ】などを意味しています。
基本的にシニアというのは、敬う意味として使われることが多いのですが、英語を理解していないご高齢の方に『シニア』と言うと「日本人なら日本語を使え」と突っ込まれてしまうかもしれませんね。
シニアの定義は明確には存在せず、40歳以上、60歳以上、65歳以上と様々です。シニアがよく使われる場面としては、下記の通りです。
・シニアカー
・シニアマネージャー
・シニアツアー
・シニアクラス
・シニアリーグ
・シニア求人
・シニア限定
・シニア歓迎
などといった物や役職、条件項目などの分野で多く使われています。
シルバーの語源は、英語のsilverから来ており【銀・銀色】を意味します。では、なぜシルバーが高齢者の意味になったのか。
シルバーが高齢者になった由来は、日本の電車の高齢者専用シートが銀色のシートを使っていたことから【シルバー=高齢者】という認識になっていったと言われています。シルバーがよく使われる場面では下記の通りです。
・シルバー料金
・シルバー人材センター
・シルバーウィーク
・シルバーカー
・シルバードライバー
・シルバーサービス
などといった標章や物、機関などに使われる傾向にありますが、人に対して使うことはあまりないと言えます。
時にはお年寄りと言う呼び方もしますが、年寄りとは年齢の高い人、経験や知識の豊かな人を意味します。
年寄りは敬語表現となる言葉なので基本的には丁寧語です。よくお年寄りを使う場面としては「お年寄りの方はこちらになります」「お年寄りの方でも○○が使いやすい」と相手に何かをしてもらう時などに使われています。
また、お年寄りの派生系にはなりますが「お年を召した方」と召すを使うことで【老い】を隠す意味でも使われていることから、基本的には年寄りという言葉は直接相手に使う場合としては、一番失礼のない言い方と言えるでしょう。
そもそも、年寄りという言葉は数百年前から使われており、鎌倉初期では天皇の側近のことを年寄衆と呼ばれていたり、江戸時代になると職制の中核となる人を【大老、老中、若年寄】と呼んでいました。現代で言えば、相撲の構成役員や力士の養成者に当たる者(親方)のことを年寄と呼んでいます。
ここでは5つの呼び方を紹介しましたが、実際それらの呼び方は何歳からなのか。博報堂生活総合研究所の【シルバー調査】では、過去30年に渡って首都圏の60歳~74歳の男女に対して行い、その中の【シルバー世代に対する意識(2016年)】というデータを公表しています。
その調査の質問項目で「あなたのお考えでは何歳からが高齢者・老人・シニア・シルバー・お年寄りですか」という問いがあり、その結果の平均値年齢が下記の通りです。
シニアとシルバーが60歳代と若いイメージがあり、高齢者、お年寄り、老人と呼ばれる意識される年齢は徐々に上昇しているのが分かります。
年配者の方を差す言葉には色々ありますが、ここでは5つの呼び方についてお伝えしました。恐らく、普段生活をしている中で、これらの言葉を聞いたことがない方はいないと思います。それだけ、わが国には高齢者が多くおり、その時々で言葉のチョイスをしていかなければならないということでもあります。これらが生活に役立つかは別として、雑学として覚えていただけたら幸いです。