突然ですが、皆さんは高齢者は何歳からだと思いますか?実は高齢者の定義というのは、社会や目的、趣旨で変わっていきます。ちなみに、国連の世界保健機関(WHO)が唱える高齢者の定義では、65歳以上の人を高齢者としており、国際的にはこの基準が主流となっています。
しかし、ここにきて日本では、高齢者の定義を70歳に引き上げる動きが出ています。それは一体なぜか。ここでの記事では、わが国における高齢者の定義や年齢の引き上げの意図についてお伝えしたいと思います。
冒頭でも少し触れましたが、国際基準では65歳以上を高齢者としています。ただ、これはあくまで国際基準なので日本も全く同じかというと、そうではありません。
それは、各法律によって高齢者の定義が異なるからです。
まず、公的年金の受給資格、介護保険などでは65歳以上からが高齢者ですが、道路交通法での高齢者の定義は【70歳以上(高齢運転者)】となっています。
高齢者の医療の確保に関する法律になると、前期高齢者(65歳から74歳まで)と後期高齢者(75歳以上)に分かれています。
わが国では法律の目的や趣旨によって高齢者の定義が異なるため【高齢者は○○歳からです】と、言い切れないのが現状です。
高齢者の年齢は、法律などで異なることは先ほどお伝えした通りですが、実際に世間が思う高齢者とは何歳からなのか。内閣府は2015年3月に発表した【平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査】でそれが明らかになっています。その結果が下記の通りです。
自分を高齢者だと感じていますか?
はい | いいえ | 無回答 | |
---|---|---|---|
60~64歳 | 10.3 | 86.4 | 3.3 |
65~69歳 | 24.4 | 71.8 | 3.8 |
70~74歳 | 47.3 | 48.2 | 4.5 |
75~79歳 | 66.2 | 26.4 | 7.4 |
80~84歳 | 78.7 | 12.5 | 8.8 |
85歳 | 85.6 | 6.2 | 8.2 |
※有効回答数は3893件
調査では「あなたは、自分を高齢者だと感じますか」という問いを、平成26年(2014年)12月4日~26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に、郵送配布・郵送回収形式で行われたものです。また、この調査は平成6年から5年置きに実施されているため、最新版は平成26年となっています(現在:令和2年1月)。
全ての年代を合わせると【はい:43.4%】【いいえ:51.3%】【無回答:5.3%】という結果になりました。各年代の内訳についてはグラフの通りですが、年代が上がるにつれて高齢者と自覚する割合が増えているのが分かります。
このグラフを見る限り、75歳以上から5割を超えているので、世間では高齢者と感じる年齢は75歳以上からなのかもしれません。
近年、政府では高齢者の定義を70歳に引き上げる考えを示しています。この動きの狙いは、やはり【人手不足の解消】や【社会保障費の増大の抑制】でしょう。
まず、年齢を引き上げることで働き手の確保に繋がります。労働者数が保たれれば、経済の低迷は抑えることができ、且つ、税収や保険料の確保が安定します。あわせて、公的年金といった社会保障費の抑制にも繋がるので、こうした目的で政府は高齢者の定義を70歳に引き上げる考えです。
政府のメリットは、基本的には国民のデメリットが常です。特に国民への影響が大きいといえば、年金受給ではないでしょうか。去年は、老後年金2000万円問題が話題になっていたくらいですからね。
現在の年金受給開始年齢は65歳からですが、高齢者の定義が70歳になれば年金受給開始年齢も70歳になるのは間違いありません。そうなると、今までの人たちより5年多く働くことになり、早くリタイアしたいと考えている人からすれば、大きなデメリットなのは間違いありません。
これは個人だけではなく企業側にとってもデメリットがあり、経験豊富な人材を確保し続けられる一方で、人件費の問題や人材の固定化によって若い世代が入らず、会社の成長を妨げる可能性が出てきます。
さらに市区町村単位で言えば、各自治体には公共交通機関の無料パス、公共施設の利用割引などといった高齢者優遇措置を取っているところがあると思いますが、これがもし70歳以上になると要件も引き上げられる可能性は十分にあります。これは国民にとってデメリットでしかありません。
高齢者の定義については、正直あってないようなものです。本記事でもお伝えしているように、法律などで高齢者に該当する年齢が異なるからです。そのため、高齢者の年齢という問いをされた場合は「○○の場合は何歳からが高齢者です」となるのではないでしょうか。