高齢者を狙った詐欺事件をニュースなどで見ない日はありません。警視庁がまとめた2019年上半期(1~6月)の特殊詐欺の認知件数は8025件、被害額は146億1,000万円、単純計算をしても全国で1日あたり約8,000万円近くが騙し取られていることになります。
正直「1日にそんなに?」と思った方もいると思いますので、ここでは被害額が1,000万円以上の詐欺事件(2019年)をランキング形式にしてお伝えしたいと思います。
目次
ここでは、10~7位までの詐欺事件および被害額を紹介したいと思います。
2019年8月、岐阜県大垣市に住む84歳の高齢男性のスマートフォンに届いた「手数料を払えば4億円が受け取れる」などの嘘のメールを信用し、およそ現金1,000万円をだまし取られる事件がありました。
警察によりますと、男性のスマートフォンに嘘のメールが届き、メールに記載されていたURLをクリックしたところ、相手からチャット上で「4億円を受け取るには手数料と保証金が必要」といった内容で現金を要求されたということです。
話を信じた男性は、指定された口座に28回にわたっておよそ現金1,000万円を振り込んだということです。
その後、男性は同居する息子に「金が無いから貸してくれ」と相談し、不審に思った息子が男性に事情を聞き、その内容を警察に相談したことで事件が発覚しました。
2019年12月27日、大阪府内の住む高齢夫婦宅に息子を装い「保証人になった。金が必要。」とウソを言って信じ込ませ、現金1,040万円をだまし取る事件が起きました。
警察によりますと、12月25~26日に複数回にわけ、長男を名乗る男から夫婦宅に「会社の同僚の保証人になったが逃げられた」「1,300万円が必要だ」などの電話がありました。毎月、実の長男が安否確認などのため夫婦宅に電話をかけていたこともあり、男の声や口調が長男に似ていたため夫婦は信じてしまったということです。
その後、夫婦は26日に金融機関の窓口で1千万円を引き出そうとしたため、不審に思った職員が警察署へ通報。しかし、駆けつけた署員3人が説得に当たるも、夫婦は「夫の病気の治療費だ。不審な電話もなかった」などと話し、現金をそのまま引き出しました。
夫婦の帰宅後、長男の弁護士の甥を名乗る男に現金1,040万円を封筒に入れ手渡しました。手渡し後、夫婦が実の長男と連絡を取り事件が発覚したということです。
2018年11月、京都府警の山科署地域課に勤務していた高橋龍嗣被告(38)は、特殊詐欺の通報で知り合った78歳男性が多額の資産を保有しながら生活保護を受給していたことを知り「不正受給の捜査としてお金を預かる」などの嘘をつき、2回にわたり現金1,180万円をだまし取ったとして、2019年6月15日に詐欺容疑で逮捕されました。
高橋被告は、自ら金融機関に連絡し「高齢男性が現金を下ろしたいと言っている」などと事前に根回しをし、男性に高額の金を引き出させていました。
2019年の春の定期異動で高橋被告は府内の山科署に異動しており、その後連絡がないことを不審に思った男性が、前任の交番に問い合わせたところ事件が発覚しました。
警察の取り調べに対し「金は為替取引に使った」と供述し、だまし取った金の大部分は使い切ったということです。また、高橋容疑者は「金を借りた」「あとで返すつもりだった」と容疑を否認していました。
その後、2019年11月21日京都地裁は「警察官の信頼を利用し、投資で貯蓄を使い込み、だまし取った金をさらに投資につぎ込んだ自分本位な犯行だ」として、高橋被告に懲役5年の実刑判決を言い渡しました。
2019年2月中旬ごろ、愛知県豊川市に住む70代の女性宅に詐欺の電話があり、現金1,200万円をだまし取られる事件がありました。
警察によりますと、女性宅に男から保険の勧誘の電話があり一度は断りましたが、その後同じ男から「あなたの名義を借りて債権を2,000万円を買いました」「警察に捕まるので、お金を振り込んで欲しい」などと嘘の電話を何度も言われたため、女性は3回にわたって現金1,200万円を振り込んだということです。
その後、金融機関の職員が高額の振り込みが続いたことを不審に思い、職員が警察に通報したことで事件が発覚しました。
ここからは、6~4位までの詐欺事件および被害額を紹介したいと思います。
2019年3月、北海道旭川市の近郊に1人で住む70代の女性宅に【特殊詐欺防止コールセンター】を名乗る男らから「あなたの個人情報が登録されている」「逮捕されないためには金が必要」などの嘘の内容で女性を不安に煽る電話がありました。
男らの話を信じた女性は2019年3月から5月4日まで、3回にわたり道外の住宅に現金1,900万円を送り、だまし取られたということです。
2019年5月8日、埼玉県さいたま市に住む72歳の女性宅に【民事訴訟最終通知書】と記載された架空請求に騙され、現金2,600万円をだまし取られました。
警察によりますと、2019年3月14日に女性宅に【民事訴訟最終通知書】と記載されたハガキが届き、ハガキの内容を信じた女性は記載されていた連絡先に電話をし、訴訟通知センター職員や弁護士を装う男らに「このまま放置すれば裁判になります。裁判になった場合は弁護士が必要です」「弁済供託金として裁判所にお金を支払わなければいけません。弁済供託金なので裁判の取り下げが終われば、お金は戻ります」などの嘘の内容で女性の不安を煽り、現金2,600万円を要求されました。
女性は、男らに言われた内容を信じ、合計5回にわたり現金2,600万円を宅配業者から指定された都内のアパートに発送するように指示されました。しかし、発送後も現金の要求をされ、女性は金融機関で現金を引き出そうとしましたが、金融機関の職員が不審に思い警察に通報したことで事件が発覚しました。
◇ 民事訴訟最終通告書
※事件に関わったハガキではありません。
2019年3月、愛知県尾張旭市に住む70代の女性宅に、金融機関を名乗る男などから電話で株の購入を勧められ断るも「名義だけ貸してください」などと頼まれ貸してしまい、その後通信会社の社員を名乗る男から電話で「名義貸しは犯罪になる」などと言われ、現金3,000万円を要求されました。信用した女性は、自宅までに来た男に現金3,000万円を渡したということです。
2019年で最も多かった詐欺被害額3~1位を紹介したいと思います。
北海道旭川市に住む60代の女性宅に、2019年2月上旬から3月下旬にかけて架空請求の詐欺の電話で現金3,700万円がだまし取られる事件が発生しました。
警察によりますと、19年2月上旬ごろ、旭川市で1人暮らしをする60代の女性宅に道庁職員を装う男から「個人情報が登録されている」などの電話があった後、NPO法人の職員や監督官庁の職員を装う男から電話があり「保証金が必要です」「弁護士の費用が必要だ」などと言われたということです。
話の内容を信じた女性は、3月下旬ごろまでに7回に分けて現金3,700万円を振り込んだということです。
2019年12月6日、愛知県春日井市に住む80代の女性宅に警察官を名乗る男から電話があり、現金4,800万円をだまし取られる事件がありました。
警察によりますと、6日午前10時ごろ、80代の女性宅に警察官を名乗る男から「偽札が入っているかもしれないので、お札の番号を調べさせてほしい。」「今からお金を取りに行く」などという電話がありました。
電話から約40分後に、警察官を名乗る別の男に現金4,800万円を手渡し、その後男とは連絡が取れなくなったことを不審に思った女性が警察に相談したことで事件が発覚しました。
愛知県瀬戸市に住む、無職・80代の女性が現金1億5,400万円をだまし取られました。
警察によりますと、2019年10月に女性宅に弁護士を名乗る男から「訴訟を取り下げるために裁判所に支払う供託金が必要」などの嘘を言われ、話を信じた女性は宅配便で2019年10月から2020年1月9日にわたり(10回)、合わせて現金1億5,400万円を送ったということです。
2016年10月、東京都に住む79歳の女性宅に長男の上司を名乗る人物から「長男が仕事のミスをした。クビにならないためには大金がいる」などの嘘の電話があり、女性は定期預金を解約し、現金1,550万円をだまし取られる事件がありました。
その後、2019年5月17日、女性側は定期預金の解約を止めなかったのは【注意義務違反】にあたるなどとし、都内の信用金庫を相手取り、金額の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。
◇ 事の経緯をもう少し深掘り
女性は事件当日、気が動転し、雨の中を傘もささずに男性用サンダルで信金に駆け込み、職員にお金の使用用途などを問われた際に「子や孫にやりたい」と回答。信金側は女性の話を信じ、定期の解約に応じてしまったということです。
普段、女性は高額な取引をする際は自宅で行っており、家族も信用金庫に50万円を超える取引の場合は、家族に連絡するよう依頼していました。しかし、この事件当時は信金から家族に連絡がなかったということです。
この事件と提訴については、ネット上では下記のように反応しています。
だまし取られた高齢女性や家族はお気の毒ですが、注意義務違反として提訴するというのは少し違うように思えます。
恐らく女性側の言い分としては「50万円を超える取引きがあったのだから連絡すべきだ」ということなのでしょうが、大金を丸々高齢者に管理させ「何かあったら連絡してね」という他人に丸投げをしている家族も悪い気がします。
ちなみに、この犯人はまだ捕まっていません。