高齢者が食事を食べない原因と対処法について

最近、高齢のご家族で食事を食べなくなってきた、もしくは食べないといった悩みをお持ちの方はいませんか?私がケアマネジャーとして活動していた時は、受け持ちの利用者の4分の1は「食べない」という悩みを持つご家族がいました。若者とは違い、高齢者の場合だと低栄養状態になりやすいので食べなくなると不安になりますよね。

ここでは、そうした悩みを抱えているご家族のために、高齢者が食事を食べない原因と対処法について、分かりやすく解説していきたいと思います。補足として、認知症の方ではなく一般的な高齢者の食欲不振についてお伝えします。

食事を食べない原因とは

「お腹が空いていない」「今、食べる気分じゃない」といったことは人間だれしもあることです。ただ、それが長期間続いたり、あまりにもムラがあるようなら原因を探る必要があります。ここでは、高齢者に多い食べない原因についてお伝えしたいと思います。

筋肉量と活動量の低下

高齢者に多い、食べない原因の1つが【筋力と活動量の低下】です。

若者も同じですが、日頃から運動をしていなければ筋力は衰えますが、高齢者の場合は筋力の衰えは顕著に表れます。筋力が衰えると少し動いただけでも疲れやすくなり、活動量も比例して落ちていきます。

活動量が減るということは、動かない分エネルギーの消費も抑えられてしまうので、空腹を感じなくなり、これが食べない原因になってしまいます。

胃腸働きが低下

胃は加齢により弾力性が衰えるため、一度に多量の食べ物を胃に溜めて置くことが出来なくなっていきます。これにプラスして、腸の蠕動運動(ぜんどう運動:波打って押し出す)も衰えていくため、胃の中に食べ物が溜まりやすい状況になります。こうした状況が食欲不振の原因になります。

味覚・嗅覚の衰え

加齢に伴い、味を感じる細胞の減少により味覚が衰えてきます。味覚は、甘味に比べて【塩味】【苦味】【酸味】が感じ取りにくくなるため、味の濃い物を欲するようになります。

しかし、高齢になると高血圧などの問題から減塩調理された食事を出される傾向にあるため、味覚が鈍くなっているところに薄味の食事を出されると味が感じ取れないので食欲不振に繋がります。さらに、嗅覚も衰えてくるため食欲不振に拍車がかかってしまいます。

食事量が低下すると、亜鉛などのミネラル不足で味覚障害を起こしやすくなるので注意が必要です。

視覚機能の低下

見た目や色合いで食欲がそそられるのは視覚のおかげです。しかし、高齢になると視覚機能が衰えてくるため、食事を楽しみづらくなます。

特に【白内障】の悪化が原因で上手くできなくなったという人は多くいます。ちなみに、白内障の罹患率は年齢が上がるにつれて顕著で、80歳以上ではほぼ100%と言われています。

そんな白内障の主な症状が【視界がかすむ】【視力が落ちる】などがあり、こうした症状が出ると料理を出されてもハッキリ見えません。

こうしたストレスで食事が嫌になる人はいるので、食器などを工夫し(白い茶碗に白米ではなく、黒い茶碗にするなど)対応してみてください。

口腔機能の低下

口腔事情で食事をするのが嫌になる高齢者は結構います。高齢になると日々口腔トレーニングをしていなければ衰えてきます。特に私の周りで多かった理由が下記のとおりです。

  • 歯が減ったことによる咀嚼力の低下で噛むのが大変になった。
    • 入れ歯の対応や食事形態(軟らかく)を変えることで改善されることが多い。
  • 嚥下機能(えんげ:飲み込み)が落ちたので、誤嚥に対する恐怖の増えた。
  • 唾液が出づらくなったので、味覚が鈍感になり、食べ物を上手く包み込めず飲み込みづらくなった。
    • 食前に口腔トレーニングやトロミなどをつけると改善されることが多い。

食べないときの対処法

基本的には、上記の原因を解決すれば対処できる場合がありますが、対処法について深堀りしていきたいと思います。

運動不足の解消

活動量の多い運動をするのではなく、体に合った運動をするのが大事です。特に普段が体を動かさない人が慣れない運動をするとケガの原因になります。

最初のうちは、椅子に座って出来る足踏みやストレッチがオススメです。「いきなり運動は大変」という方は、食事前に行う軽めの体操の動画を添付しておきますので試してみて下さい。

香辛料を入れた料理

味覚や嗅覚の衰えに負けない香辛料が入った料理を取り入れてみてください。例え、ペースト状の食事でも【酢(少量)・七味とうがらし・こしょう・梅干し】などといった味覚や嗅覚を刺激するような調味料や香辛料を使うことで食欲が増進します。

のど越しの良い料理

噛む負担が少ない、のど越しのよい料理を提供することで食べてもらえる場合があります。

のど越しの良い料理
  • 茶碗蒸し
  • 寒天を使った料理
  • 麺類(そうめん)
  • ポタージュスープ
  • ゼリー

少量の食事で多食する

意味不明かもしれませんが、簡単にいうと【少量の食事を数回に分けて食べる】。つまり、1日3食にこだわらないということです。高齢者にとって一回の食事が多い場合、量の多さで「もう、嫌」と食べる気が無くなる場合があります。

● 私が経験した中で、こんな方がいました。

・朝8時に食事を開始して、食べ終わったのが10時頃。昼食の時間は13時で食べ終わったのが15時。夕食は19時で食べ終わったのが21時と、1日のほとんどが食事で終わっているという驚くような生活スタイルの方がいました。

その後、食事が遅いのでご家族は食事量を減らしてしまい、気づけば低栄養という結末になってしまいました。

後から本人に聞いたところ「一回の食事の量が多くて、食べるのが大変だった」「申し訳なくて言えなかった」と話してくれました。

こういう人の場合だと尚更、1回の食事量を少量にして提供し、また数時間ごとに少量の食事を提供するというやり方が効果的です。それでも変わらない場合は、食事形態を変えるなどを試してみてください。

食べないからといって食事量を減らすというのは、低栄養に陥る可能性がありますので慎重に判断してください。

まとめ

高齢になると、食べるという行為自体がエネルギーがいるので提供する側も【食材・料理・食べる環境・食事道具・時間帯】などといった配慮が必要になります。一番大事なのは「どのようにしたら食べてくれるか」という前向きに原因を探ることが解決に近づきます。

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