タイトル:高齢者の貧血の原因と症状とは
貧血は、赤血球の中に含まれる酸素や栄養を運ぶ役割のあるヘモグロビンの濃度が基準値より低くなった状態のことを指します。若者に多い貧血は、偏った食事による鉄分不足や女性の月経過多などでなりますが、高齢者は若者とは少し異なる原因で貧血になる場合があります。ここでの記事では、高齢者の貧血の原因や特徴についてお伝えします。
目次
WHOの基準に従えば、ヘモグロビン値が男性13g/㎗未満、女性12g/㎗未満が貧血とされています。
赤血球が減少すると、ヘモグロビンも減少するので体中に酸素が行き渡らなくなります。体はこの事態を対処するために、心臓から大量の血液を繰り出したり、呼吸数を増やしたりします。その結果、後にお伝えする貧血の症状になります。
高齢者の貧血は、若者と違ってさまざまな原因が存在します。その原因は大きく分けて3つありますので、紹介したいと思います。
鉄欠乏性貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンを構成する鉄が不足、もしくは悪性腫瘍による持続出血によって起こる貧血です。高齢者が鉄欠乏性貧血になっていたら、消化器系の出血の原因が多いため、悪性腫瘍を疑って内視鏡検査することが重要になります。
悪性腫瘍が原因ではない場合は、食事量の低下による栄養不足が原因の可能性があります。よくあるのが歯が悪くなったことで、簡単に食べられる食事ばかりをして栄養不足になるケースです。
また、高齢者の中には胃を切除している人も中にはいて、胃を切除することにより十分に鉄分を摂ることができず鉄欠乏性貧血になる人はいます。そうしたことからも、高齢者の貧血は色んな角度から原因を探る必要があります。
捕捉として、鉄欠乏性貧血の検査をする場合は、ヘモグロビン値からでは分からないこともあるため、フェリチン値(貯蔵鉄)を測定することで隠れ貧血を特定することができます。
フェリチン値の例えでいえば、ヘモグロビン値は【財布の中にあるお金】、フェリチン値は【銀行口座にあるお金】のイメージです。財布にお金があっても銀行口座に残高が少ない状態は、いわば日銭を稼ぐために自転車操業をして無理をしている状態です。それは体に蓄えがない状況と一緒なことなので、無理をするとすぐに体に不調が現れます。
そのため、ヘモグロビン値だけでなくフェリチン値にも注意する必要があります。
慢性炎症性疾患(以下、慢性疾患)が原因で貧血に陥りやすくなります。慢性疾患とは3か月以上持続する疾患のことです。特に高齢者は、何らかの慢性疾患を持っていることが多く、感染症や膠原病に伴う慢性炎症、リウマチなどの関節炎、がん、慢性腎障害などがあげられます。
これらの影響で、赤血球の産生が低下し、鉄分が十分にあっても血液をうまく作れない状態になり貧血を起こしやすくなります。
貧血の程度が軽度且つ1年以上変化がなく、原因疾患が特定できないものを老人性貧血(原因不明の貧血)といいます。加齢に伴う【赤血球産生能の低下】や【赤血球を刺激するホルモンに対する感受性の低下】などといった複合的な原因が考えられています。
通常だと動悸や息切れ、めまいなどといった典型的な症状が出現するのですが、高齢者は日常生活において活動量は多くないので自覚症状が乏しいのが特徴です。
しかし、典型的な症状が出ない反面、認知機能の低下(物忘れ)や狭心症の症状のような胸の痛み、食欲の低下などの消化器症状といった多彩な症状が現れる場合があります。
普段と変わらず生活をしているにもかかわらず、上記の症状や疲れやすくなったり、元気が出なかったり、気分が悪いなどと感じたら貧血を疑ってみてください。
本記事でもお伝えしたように、高齢者の貧血は1つの原因ではない場合があります。また、感染症や悪性腫瘍といった慢性炎症が原因である場合は、元の病気を治さなければ改善は見込めません。ただ、もし鉄欠乏性貧血だった場合は、たんぱく質や鉄分を摂取することで改善されることがあります。
1日に必要な鉄分の推奨量は、70歳以上の女性は6.0mg、70歳以上の男性は7.0mg
とされています。
下記の項目に、いくつ当てはまったかで鉄不足の程度が簡易的に分かります。
2~3つ当てはまった:軽度の鉄不足
・危険な状況ではなく、症状の進行を防ぐために食生活の改善、特にたんぱく質と鉄分を積極的に摂取することをオススメします。
4~5つ当てはまった:中度の鉄不足
・鉄不足が進行しており、心身の不調は鉄分不足の可能性があります。食事で鉄分の多い動物性たんぱく質を積極的摂取し、鉄剤やサプリなどでも補うことをオススメします。
6つ以上:重度の鉄不足
・重い鉄欠乏状態に陥っている可能性があります。病院でフェリチン値の測定などをしてもらい、主治医の指示のもと鉄不足を補う処置をしてもらってください。
鉄は、酸素を体の隅々まで供給する役割を担っており、鉄が不足すると酸素の供給が衰え、細胞が酸欠を起こします。これが鉄欠乏性貧血の正体です。鉄には大きく分けて2つの種類があり、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は【肉や赤身の魚の動物由来】の鉄。非ヘム鉄は【野菜、果物、海藻などの植物由来の鉄】の事を指します。
ただ、吸収率に関しては、非ヘム鉄はヘム鉄の5分の1程度なので、動物性たんぱく質を積極的に摂取する方が効率は良いです。
ヘム鉄が入っている食材 | 非ヘム鉄が入っている食材 |
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・豚レバー100g:13mg ・鶏レバー100g:9mg ・牛レバー100g:4mg ・牛もも(赤身)150g:4.2mg ・牛肩ロース(赤身)150g:3.6mg ・牛サーロイン(赤身)150g:3mg ・卵1個分:1mg ・アサリ(生)50g:1.9mg ・シジミ20g:1.7mg | ・干しヒジキ(鉄釜・乾)10g:5.8mg ・きくらげ(乾燥)10g:3.5mg ・がんもどき80g:2.9mg ・小松菜100g:2.8mg ・枝豆100g:2.7mg ・大根葉80g:2.5mg ・ほうれん草100g:2mg ・カシューナッツ30g:1.4mg |
たくさん食べれないという方は、サプリメントでの補充をオススメします。
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ふらつき、めまいなどを感じたら、ゆっくりとその場でしゃがんで下さい。理由は、それらの症状の悪化や転倒防止に繋がるからです。症状が落ち着いて立ち上がる際も、ゆっくりと立ち上がり、歩く際もゆっくりと一歩を踏み出してください。無理は禁物です。
ふらつき、めまいなどがあることを周囲に伝えておくことで、身の回りのサポートをうけやすくなります。また、歩行時なども気遣ってくれる場合があるので、貧血がある方は周囲に伝えておくことをオススメします。
血液検査をした時に必ずデータをもらうと思いますが、その際に【ヘモグロビン値】【フェリチン値】を把握しておくことが大事です。高齢者の場合は、貧血による自覚症状が乏しい傾向にあるので、データを把握しておくことは早期対策に繋がります。
いかがでしたでしょうか。
高齢者の貧血は、若者のように原因が1つでないことが多いのが特徴です。やはり、そこには慢性疾患や、加齢による身体能力の低下があるからです。もし、鉄欠乏性貧血だった場合には、生活習慣の見直しなどで改善できる可能性はあります。慢性疾患が原因での貧血の場合は、元となる病気を治すのが先決です。
老人性貧血は原因が特定できないため、病院に定期的に受診し、主治医と共に病状の経過観察やその時に適した指示をもらい従うことが良いでしょう。
※参考文献~
・監修:精神科医/ふじかわ心療内科クリニック、藤川徳美・精神科医が考えた!心をつよくする食事術より
・国立がん研究センター
・健康長寿ネット