疥癬という病気はご存知でしょうか?疥癬というのは、皮膚の角質層にダニが寄生することでかゆみなどをきたす病気です。また、疥癬にかかる人の多くは、免疫力が低下している高齢者と言われています。さらに、疥癬は周囲の人にも感染するので、同居している人がいる場合は特に注意が必要となります。ここでの記事では、そんな疥癬にかかる原因と対策について、深掘りしていきたいと思います。
「疥癬」とは、「ヒゼンダニ(ヒトヒゼンダニ)」というダニの一種で、ヒゼンダニは人の皮膚に寄生することで起こる皮膚の病気です。感染すると、「胸部・腹部・太もも周辺など」体の各所に激しいかゆみが生じます。
また、ヒゼンダニは衣類やリネン類(寝具など)を介して人から人へと感染していきますので、適切に対処しなければ、感染が瞬く間に広がります。
疥癬には種類があり、「通常疥癬」と「ノルウェー疥癬(角化型疥癬)」の2つの種類が存在し、どちらもヒゼンダニが原因となっています。
◇ 2種類の疥癬の症状は異なる
通常の疥癬の場合は、感染直後は症状がないのですが、感染後「約4〜6週間」で多数のダニが増殖し、脱皮殻や排泄物(糞)が原因で、アレルギー 反応が起き激しい痒みが生じます。
ノルウェー疥癬もダニの増殖、アレルギー発症の原因などは同じですが、ノルウェー疥癬は多数のダニが移りますので、潜伏期間は「約3・4日」程度で、発症は通常疥癬より早いです。
それぞれの違いについては、下記の通りです。
通常疥癬 | ノルウェー疥癬(角化型疥癬) | |
ヒゼンダニの数 | 数十匹程度(多くて千匹程度) | 100万~200万匹 |
感染時の免疫力 | 正常(低下していれば確率は上がる) | 低下している状態 |
感染力 | 弱い | とても強い |
主な症状 | 赤いブツブツ(結節・丘疹)、疥癬トンネル | ● 皮膚が乾燥したような状態。 ● 分厚い垢が増えたような状態(角質が増殖する) |
かゆみ | 激しいかゆみがある | 不規則(かゆみがある時とない時がある) |
症状が出現する部位 | 頭部を除く全身 | 全身 |
潜伏期間 | 約4~6週 | 約3.4日(長くて2週間ほど) |
感染者との接触 | 短い時間の接触では、ほとんど感染しない。 | ● 短い時間でもすぐに感染する。 ● 皮膚から剥がれた角質を触るだけで感染する。 |
感染者の対応 | 通常生活で良い | 個室隔離 |
ヒゼンダニは、オスよりメスの方が大きく、メス成虫は体長約400μm、幅約325μmで、肉眼ではほとんど見えません。また、約2週間で卵から成虫に成熟します(卵→幼虫→若虫→成虫)。卵は3~4日で孵化します。
ヒゼンダニは、皮膚内に掘った穴などに隠れるため、寄生部位を特定するのは困難です。また、オスはメスと交尾をするために、表皮を歩き回ります。そして、交尾後メスは、疥癬トンネルを掘り進みながら、寿命が尽きる約1か月までに「1日2~4個」ずつ産卵し続けます。
ちなみに、ヒトの体温より低い温度では動きが鈍くなり、16℃以下ではほとんど活動しなくなります。
疥癬の発症者は、免疫力が低下した高齢者に多いのですが、実は若い世代も含めた幅広い年齢層でも感染します。疥癬は、感染症法の届け出義務がないため、正確な発生件数と患者数は不明とのことですが「年間8万から15万人」の疥癬発症患者が出ていると推定されています。
「幼虫・若虫・雄成虫」の場合は、人の皮膚を歩き回るため、皮膚同士の接触で感染します。そのため、家族、介護者、ダンスの相手、麻雀時、セックスなど人と接触する行為には注意が必要です。
しかし、通常疥癬患者と、数分程度の接触では感染することはほとんどないと言われています。ですが、通常疥癬患者の場合でも、衣類やリネンを共有するのは避けた方が良いでしょう。
通常疥癬とノルウェー疥癬の感染力には圧倒的な違いがあります。そのため、対策も異なっていきます。
通常疥癬 | ノルウェー疥癬(角化型疥癬) |
・長時間、肌と肌を接触させない。 ・衣類やリネン類といった直接肌に触れる物の共用は避ける。 ・同じ部屋で布団を並べて寝ない。又は、一緒の布団では寝ない。 | ・ノルウェー疥癬と診断された場合、同居人など接触した恐れのある人全ての人が皮膚科を受診する。 ・感染者が使用した衣類やリネンなど掃除機などで丁寧に表面を掃除する。 ・掃除は掃除機で念入りに行う。 ・入浴は毎日行う。 ・衣類やリネンなどは毎日交換し、50℃以上のお湯に10分以上浸した後に洗濯を行う。 ・殺虫剤は、感染者部屋と共同で使用していた部屋に治療開始時(診断された日より)念入りに散布。 ・治療終了後にも、殺虫剤を散布する。 |
◇ ヒゼンダニに効く忌避剤
【WAKE】サラバースプロ(ブルーラベル:ゴキブリ・ダニ等忌避剤)100ml(夏季限定品)・リニュアル【05P03Dec16】
|
農薬、殺虫剤ではないので、体には優しい成分となっています。また、ゴキブリにも一定の効果がある製品となっています。
基本的には「飲み薬」と「塗り薬」の2種類の治療法があります。飲み薬については、イベルメクチン(製品名:ストロメクロール)がよく処方される治療薬です。ですが、非常に強い薬なので肝機能障害になる可能性があるため、使用の際は主治医と要相談が必要です。
塗り薬については、フェノトリンローション(製品名:スミスリンローション)やイオウ剤などが用いられます。これらは、血中には吸収されないため安心して治療が行えますが、効果については飲み薬より確実に落ちます。
基本的に疥癬にかかる人は高齢者に多いですが、若い世代の人も全くかからない訳ではありません。記事で紹介した症状が現れたら直ぐ皮膚科の受診をお勧めします。というより、我慢できないと思うので受診はすると思いますが、発症まで一緒にいた人も注意が必要となります。感染者自身の対応も大事ですが、疥癬の感染を広めないように対応するのも大事となりますので、この記事が参考になれば幸いです。