アルツハイマー病の予防ワクチンを開発 老年病研究所

2019年8月5日、老年病研究所認知症研究センター(前橋市)などの研究グループは、認知症の原因となるアルツハイマー病のワクチンを、遺伝子を組み換えた大豆から作製し、根本治療のための予防薬を開発したと発表しました。マウス実験では、神経に悪影響を与えるタンパク質を減らし、非毒性化させたということです。

抗体ができ、毒性の高い物質が減少

アルツハイマー病の原因物質でもある【アミロイドβタンパク】の一部を組み入れた大豆タンパクからワクチンを作製し、アルツハイマー病の脳を再現したマウスに1年余り、週1回の経口投与させて、通常の大豆タンパクだけを与えたマウスと記憶能力の比較を実施しました。

実験の結果、ワクチンを投与したマウスだけに抗体が作られました。脳内のアミロイドβタンパクの総量は変わらなかったものの、毒性の高い物質の割合が減少し、反対に毒性の低い物質が増えたことで、学習機能の低下が抑制されました。治療で問題とされる脳髄膜炎や出血などの副作用は確認されなかったということです。

25年以上前から蓄積されていく

アルツハイマー病患者の脳は、認知症が発症する25年以上前からアミロイドβタンパクが溜まり、徐々に認知機能に影響が出始めてくるため、発症後の治療が難しいとされています。そのため、現在では【予防治療】が重視されています。

今回の治療法は、発症前からの長期間にわたる投与を想定し、注射でなく経口投与です。また、植物の遺伝子組み換えによるワクチンのため、安全性が高いとされています。

※研究詳細ついては、米国のアルツハイマー病研究の学術誌【ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ】の2019年7月23日号に掲載。