「Robert Reinhart」と「John Nguyen」が行った研究で、脳の前頭前野と側頭野を特異的なリズムで刺激することで、加齢によって低下する作業記憶を回復させられることが分かりました。
◇ 2種類の脳波が関係している
作業記憶とは、情報を短時間保持することができる能力ですが、この能力は加齢によって低下していきます。若年成人の作業記憶は、脳領域内と脳領域間の特異な神経相互作用と関連しており、この過程で、前頭前野と側頭野における2種類の神経振動(ガンマリズム・シータリズム:脳波)のパターンが関係していると考えられています。このシータリズムの同期も作業記憶と関連しているとされ、前頭前野と側頭野の長距離の相互作用を促進する可能性があるとされています。
◇ 高齢者が若年成人並みの記憶力に
「Robert Reinhart」と「John Nguyen」は、脳波検査を使い、相互作用が高齢者にどのような変化をもたらすのか研究を行いました。また、研究では、非侵襲的(体を傷つけない)刺激法を脳に実施し、60~70歳の長期のシータ相互作用を調節しました。
・協力者:「42人の若年成人(20~29歳)」と「42人の高齢者(60~76歳)」
今回の研究には、上記の協力者の「脳の刺激を行った状態」と「脳の刺激を行わなかった状態」で作業記憶課題を行ってもらい、その成績を評価。
研究の結果で、「脳を刺激しない場合」の高齢者は、若年成人より作業記憶課題の進行度が遅く、正確性も劣っていました。若年成人については、作業記憶課題中に左側頭皮質のガンマリズムとシータリズムの相互作用が増強され、前頭前野と側頭野のシータリズムの同期生が上昇していました。
次に、「脳の刺激を受けている場合」の高齢者は、作業記憶課題の正確性が改善され、若年成人並みに能力が向上し、この効果は、脳の刺激から50分間持続していました。
改善されていた背景には、若年成人同様の左側頭皮質におけるガンマリズムとシータリズムの相互作用の増強と相関し、左側頭皮質と前頭前皮質のシータ脳波の同期性が上昇していたことによるものと判明しました。
今回の研究成果は、高齢者の認知機能の低下の改善をするための介入法の基礎となる可能性があるとされています。