豊明市:介護保険外サービスが注目 民間企業と連携

わが国の高齢化の進展は、先進国の中でもかなり早いスピードで進んでおり、現在の高齢化率は27.7%、4人に1人が高齢者となっています。高齢化の進展に伴い、介護保険サービスの需要が高まる中、愛知県豊明市では「介護保険外サービス」への取り組みが注目されています。平成30年度には、豊明市に視察に訪れた市町村関係者などは800人を超えるといいます。では、どのような取り組みを行っているのか。

◇ 温泉施設を活用し、高齢者の外出の機会を増やす

豊明市は、市内に住む、介護保険サービスを1年間利用した高齢者の状態を把握するため、追跡調査を実施しました。調査結果は、介護保険サービスを1年間利用した約6割の高齢者が状態が悪くなっていました(要支援者含む)。この結果を受け、市は、介護保険には限界があると気づき、要介護から回復する可能性が高い、軽度の要介護認定の高齢者を元の暮らしに戻す取り組みを始めました。

・日帰り温泉施設に目をつける

ディサービスなどを利用していた人が、何らかの理由で辞めてしまった場合、外出の機会がなくなるといったことはよくあります。そこで、市は、名古屋市緑区にある日帰り入浴施設「楽の湯」の無料送迎バスに目をつけました。この送迎バスは、豊明市を回るコースが1日3便ありました。

市は「このバスを利用し、毎日温泉に入りに行くことができれば、外出の機会になる」と考え、温泉施設側に「豊明市の人たちに、無料で送迎バスが利用できることを知らせたい」と連携協力を依頼。温泉施設側は快諾し、チラシやパンフレットなどの資材を提供。市は、バス停のある地域の集会所や老人クラブなどにチラシを配るといった市と民間企業の連携活動が始まりました。

この活動後、開始前と比べて無料送迎バスの乗車率が3倍にまで増えたということです。

◇ スーパーで購入した商品を無料配送

宅配サービスはありますが、高齢者にとって注文票の文字が小さすぎて見づらく不評でした。また、頼んでも1週間後に届くので忘れる。自分の目で見て、選んで買いたいという意見が多く集まっていたということです。

そこで、生活協同組合「コープあいち とよあけ店」と市が連携。店頭で購入した商品を預けると午後2時以降に自宅に配送する「ふれあい便」サービスが始まりました。

サービス開始後、通常の客単価はおよそ1,500円だったのに対し、「ふれあい便」の開始で7,500円を超えるといいます。宅配をしてくれることで、まとめ買い客が増えた可能性があるとされています。また、店舗の売り上げの2.5%が「ふれあい便」だということです。

◇ 行政が高齢者と民間企業との橋渡し

今は、インターネットやスマートフォンの普及で情報が手に入りやすい時代ではありますが、高齢者の間では未だ情報弱者が多い現実があります。どんなにいいサービスが世に出回っても、高齢者に知られなければ活用がされません。また、活用されなければ、民会企業は撤退し、高齢者も活用できず状態がさらに悪くなります。

そういった悪循環にならないためにも、行政が高齢者と民間企業の橋渡し役になることが重要となっていくことでしょう。