2019年3月12日から茨城県水戸市の介護施設で、殺処分予定だった保護犬が「セラピー犬」としての訓練を終え、新たな生活をスタートさせました。この取り組みは、動物とふれあうことで人に癒しを与えるとともに、犬猫の殺処分ゼロにつなげる目的で始まりました。しかし、保護された犬をセラピー犬として訓練するための費用をどのようにするかが課題となっています。
◇ 殺処分ゼロを目指す活動支援事業
今回、介護施設でセラピー犬としてデビューしたのは、雑種の「名前:オール」です。オールの年齢は、推定3歳とされていますが、推定の理由については、保護犬として茨城県笠間市の動物指導センター(以下、センター)で保護されていたからです。また、センターで保護された犬は、一定期間内に引き取り手がいなければ殺処分されることになっています。
茨城県が目指す「犬猫の殺処分ゼロ」活動支援事業で、保護された犬がセラピー犬として活躍する「育成プロジェクト」が認められました。そして、オールは、去年8月に企画提案をした水戸市にある訓練施設「ワンダフルパートナー」に引き取られ、半年間にわたり訓練を受けていました。
◇ 地域で可愛がってもらいたい
オールを引き取ったのは、社会福祉法人「愛(めぐみ)の会」です。以前に、複数の介護施設でも犬を飼っており、入所者に好評だったことから、今回オールを引き取ったということです。
介護施設の木村都央理事長は、「動物が人を笑顔にする力はすごい。地域や隣接する保育園の子どもたち含め、みんなで、オールを可愛がってもらえるようにしたい」と話しています。
今後、オールには入所者の人たちとのふれあいや、散歩の同行などの役割を与えていくということです。
◇ 訓練費などの問題が浮き彫りに
今回の訓練にかかった費用は、およそ60万円。茨城県からの補助金が10万円。残りは、水戸市内でドッグカフェやシュナカフェを営む「フレックス」が寄付したことにより、何とか事業化することができました。また、センターから引き取る犬は、訓練費のほかにも医療費などもかかるため、切りつめても費用がかさむという現実があります。
茨城県生活衛生課は「センターに来る犬猫の数を減らす対策とともに、引き取りにつなげる対策も同時に必要」としたうえで「人への癒しを与える試みはありがたい。こういった取り組みを将来的に、費用を含めた対応を充実させていきたい」と県も今後の対応について前向きに検討をしています。
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