2019年10月9日より厚生労働省は、社会保障審議会の介護保険部会で、介護保険サービスを受けられる年齢の在り方について議論を始めました。争点となったのは、高齢者の再定義です。
再定義の背景には、膨張する介護給付費にあります。介護保険制度というのは介護のニーズに対応するために2000年より創設された制度です。財源でもある保険料については【40~64歳】が現役世代として納付し、会社員分は保険料の半額を会社事業主が負担、65歳以上は介護保険料を納めつつ、介護認定が下りれば介護サービスを受けれる仕組みになっています。
しかし、創設より19年経った今、高齢期に入っても元気に働き続ける人は増加し、今の仕組みは時代に即していないという意見が多数ありました。18年度の介護保険総費用は11兆1,000億円で、創設時の3倍以上。さらに、大企業の40~64歳が支払う保険料の平均は年10万円(過去10年で4割以上増)、65歳以上は年7万円(同4割増)となっています。
そのため、30代などにも保険料の負担を強いるよう何度も検討されてきましたが、理解は得られず実現には至っていません。こうした背景から、今回はこれまでとは異なる65歳の年齢の引き上げの議論が始まったのです。
全国健康保険協会の安藤伸樹理事長は「支える側の人口が減ることを考えれば、少しずつ議論を進める必要がある。年金や医療保険と整合性のとれた仕組みにする必要がある」と指摘。平均寿命が介護保険制度の創設時より約3歳延びているなか、65歳で区切る現行制度を見直すべきという意見が出ました。
政府自体も70歳までの就業機会を提供するよう求める法改正を目指しており、また公的年金の受給開始年齢を本人が希望すれば【70歳超に繰り下げられる制度改正】や、企業年金で【企業型確定拠出年金の掛け金の期間を70歳まで伸ばす案】が出ています。
仮に介護保険サービスを受ける年齢を70歳以上に上がれば、介護保険給付費は抑えられ、財源の抑制に繋がります。しかし、そうなると現役世代として保険料納付を69歳まで引き上げる議論も必要となるため、会社員の介護保険料の半分を納めている企業の負担が増え、企業側の反発は必至。
ただ、65歳以上の人でも元気に働いている人はいるのは事実。労働力調査では65~69歳の就業率は18年に46.6%と、00年より10%強も上昇しています。こうした問題は、待ったなしのところまで来ているのが現状です。