環境省は、家で出たゴミを集積場まで運ぶことが困難な高齢者のために、自治体などが高齢者の自宅に出向きゴミを回収する「ゴミ出し支援」制度の拡充に乗り出す方針を決めました。現在、ゴミ出し支援制度を実施している自治体は全国で2割程度で、同省は支援状況などを調査したうえで、自治体向けのガイドラインを来年3月までに作成し、制度づくりを促すということです。
◇ ゴミ屋敷問題の対策に
日本国内の世帯は約5,000万世帯あり、そのうち65歳以上の高齢者世帯は4分の1を占め、さらにその半分近くが高齢者の単身世帯です。
高齢になると、筋力低下や生活意欲の低下、それに加えて認知症などにより自力でゴミ出しができなくなる傾向にあります。そういった悪循環から、家にゴミが溜まっていき「ゴミ屋敷」になっていきます。また、ゴミ屋敷は、ただ家にゴミが溜まるだけではなく、「周囲への異臭」、「火事」など近隣にも影響が出てくるため無視できない問題です。
◇ ゴミ出し支援の実施、全国で23%に留まる
2015年に国立環境研究所が、全国の自治体に行った調査で、高齢者のゴミ出し支援制度がある自治体は、わずか23%。また、「ゴミ出しが困難な住民が今後増える」と回答した自治体が87%にも上ったことが分かりました。現在、環境省でも全国の自治体のゴミ出し支援の実態調査中で、先進的なゴミ出し支援を行っている自治体の活動内容を盛り込み、ガイドラインの作成を行うとされています。例えば・・・
・東京都日野市:「ハンディキャップシールをゴミに貼ることで、規定時間外でも集積場にごみを出してもよい(主に、ヘルパーなどが昼間に出すことが多い)」
・千葉県流山市:「清掃業者に委託し、高齢者宅の玄関先でゴミを回収する」
・福島県福島市:「市職員が自ら高齢者宅に出向いてゴミを引き取る」
◇ ゴミ出し支援がない自治体に助成金
ゴミ出し支援制度がない自治体からは「人手不足」「予算の確保」といった難しさから行えない自治体もあり、仙台市ではゴミ回収を行っている町内会やボランティア団体に対して助成金を出す制度はあるが、このような自治体は一握りというのが実情です。
そのため、同省は来月以降、ゴミ出しの支援制度がない自治体には「ゴミ出し支援のモデル事業」を実施。限られた自治体の予算で「どのようなゴミ出し支援のあり方があるのか、効果的なのか」といった自治体の課題と解決策を見出し検証を行います。
それらの結果も踏まえてガイドラインの作成を行い、来年3月までに完成させるということです。