東京23区で新型コロナウィルスの感染拡大により、本来介護保険サービスを受けるべき高齢者が受けていない実態が広がりつつあります。各自治体では「感染予防のため申請を控えている人が多いと考えられるが、暫定的にサービスを利用できる制度もあるので、必要な人は申請してほしい」と呼びかけています。
NHKが東京23区を取材したところ、21の区が昨年同時期と比べ介護保険の新規申請数が減少していることが分かりました。中でも、足立区では先月の申請数は716件と昨年より112件減っており、練馬区では先月578件だったのが110件少なくなっています。緊急事態宣言が出された4月はさらに減少幅が大きく、半分ほどになる見通しだということです。
新規で介護認定(要介護・要支援)を受けるには、市区町村の認定調査員が対面で聞き取り調査を経る必要があります。しかし、介護保険サービスが必要かの調査をする自治体の職員も、感染リスクを考慮し思うように調査ができないという背景があるということです。
こうした事態を受け、練馬区介護保険課の風間康子課長は「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で相談を含めて自粛している可能性がある。去年の申請状況と比較して対策を検討していく」としています。
都内の各自治体では、介護保険サービスを受けるために必要な認定調査を延期せざるを得なくなるなどの影響が出ています。
東京・板橋区の病院や高齢者施設では、新型コロナウィルス感染拡大を受けて面会を禁止している場所もあり、認定調査を延期せざるを得ないケースが先月中旬以降よりあり、件数にしておよそ20件ほどです。
東京・北区では、認定調査時間をできるだけ短くしたり、他の入院患者や医療関係者との接触を減らすため、病室以外の部屋で調査を行うなどの対応をしているということです。
介護保険の新規申請数が減っていることについて東洋大学の高野龍昭准教授は「新型コロナウイルスの感染拡大予防で申請の自粛が起きているほか、民生委員などの地域の見守りも減っているため、高齢者の体調変化の兆候が掴みにくくなっている」と話しています。